インタビュー
音やにおいに、稲の記憶。
昨年1年間、青山にある事務所の屋上でお米の栽培に挑戦したほぼ日刊イトイ新聞の奥野さん。そんな奥野さんの実家は、奥野さんが4〜5歳になる頃まで兼業農家だったそうで。
もうその頃でも自分の家で食べるぶんを作っていたくらいだったんでしょうけれど、稲のにおいとか、脱穀機の音とか、そういうのは記憶にありますね。コンバインにこびりついた泥がカピってなっていたり。 よくじいさんには米粒をのこすな、と言われました。その感覚は持ったままここまで来たけど、自分で育ててみたら、これは本当にそうだ!!!と思いましたね。
都会のど真ん中で、お米を育ててみた。
もともと、お米を育てようと始まったわけでなく、福島の取り組みを何かしたい思いがあり、福島の木材を使ったインテリア田んぼをつくろうというのがはじまりだったとか。藤田さんに話をするうちに、バケツでお米を育てる「バケツ稲」企画が立ち上がりました。
ほぼ日さんが昨年育てたバケツ稲。(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUNまあ、やってみようか、と。
でも、事務所があるのは都会の真ん中。普通に考えれば、そこでお米が育つイメージが湧きません。「育てよう!」その原動力になったのはなんだったのでしょう。それは、ほぼ日さんの出店が決まってからこのインタビューの日まで、ずっと気になっていたことでした。
はじめはおもしろがりですね。でも止まると稲がダメになっちゃうから、ぼくらも止まれなくなって(笑)米って他の植物と違って昔は貨幣の代わりと聞いたこともあるし、枯らしてしまったら申し訳ない感が強いような気持ちに…。真夏には毎朝30リットルの水を屋上まで運んで、若かりし日のジャッキー・チェンみたいな(笑)もう、修行ですね。仕事前に汗だくなんですよ。
ぜんぶ、実感から生まれる。
水やりの苦労話を、じつに楽しそうにする奥野さん。こちらも楽しい気分を分けてもらうのも束の間、奥野さんはひとりごとのように、今回発売した「ちいさな田んぼキット(現在は完売)」を購入してくれたほぼ日読者の心配をはじめました。
水やりが一番読者の心配で多い部分なんですよね。そんなに難しいこともないんだけど、量は気になる人が多いみたいで。これからうまい方法を考えないとなー…。
とにかく試行錯誤、「やってみよう」から始まるというほぼ日さん。「ちいさな田んぼキット」の開発にあたっては、自分たちが1年間バケツ稲を育てた後、バケツがすごく汚くなる。他のことには使えそうにないけれど、捨てづらい。じゃあ、捨てられる容器にしよう、という具合に、商品はすべて“実感”から生まれているようです。
今回はここまで。次回は奥野さんご自身がお米を育ててみて変わったことをお届けします。
(取材:honshoku近藤 雄紀 高野 瞳/文:honshoku高野 瞳)
株式会社東京糸井重里事務所 ほぼ日刊イトイ新聞 奥野 武範氏
出版社に勤務後、2005年に東京糸井重里事務所に入社。読み物チームに在籍し『東北の仕事論』『21世紀の「仕事!」論。』、書籍『はたらきたい。』の編集などのコンテンツ担当。今年、「ほぼ日」として、福島県産コシヒカリの種もみを自宅で栽培できる「ちいさな田んぼキット」をつくる。▼ほぼ日コンテンツ「ただいまお米栽培中。
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